品質について
ペーパーコードの座面の耐用年数は15年から20年ほどです。 25年間、メーカーで張り替えと検品作業をしてきましたので、以前、自分が張った椅子を張り替えた経験もあります。長い経験だけが重要ではありませんが、長い経験でしかわからないこともあります。
どのように張れば耐久性のある座面が張れるのかを日々考えながら作業しています。
耐久性と仕上がりの美しさを備えたペーパーコードの張り 、特にYチェアを張るためには、熟練した技術が必要になります。ペーパーコードとペーパーコードの間に隙間が多い座面、ラインが乱れた張りは、すぐに緩むサインです。
ラインはまっすぐに隙間なく、裏面も奇麗に。何脚張っても同じ品質を心掛けています。
Yチェアの張りの場合、ペーパーコードの折り返し模様が、洋封筒の裏側のような形状にラインができます。そして、そのラインは決してX形状にはならず、必ず真中に約3cm幅の水平線ができます。(右上の写真)
それは、座面の幅と奥行きの長さが違うためで、もし、X形状になってしまった場合は引っ張り方にムラがある証拠です。
前後左右、常に全て同じテンションで張り続けることで、ラインを真直ぐに保つよう、常に気をつけて作業しています。また、長く使っても、できるだけ隙間ができないように、緩みなくきつく張っています。そのため、張り替え直後は、座り心地が固く感じるかもしれませんが、ご使用になるうちに、少しずつ馴染んでいきます。
ご使用になる環境や、使用頻度などによっても差がありますが、耐用年数は、およそ10-15年ほどです。
ほとんどの椅子の場合、座面前縁の枠の内側が擦れて切れます。1−2本切れてもすぐに座面が落ちて座れなくなるわけではありませんが、それが張り替えのサインです。J.L.Mollerの椅子の場合、その切れた縦に通したペーパーコードだけ入れ替えることは可能です。その場合、全て張り替えなくても済みますが、その両隣のペーパーコードにも負担が掛かっていますので、それも交換したほうがいいかもしれません。
また、ペーパーコードの太さにも若干の誤差があります。そのため、同じ時期に張った椅子でも、椅子によってペーパーコードの本数は違います。例えば、1本の太さが0.1mm違えば、90本で9mmの差が出ます。それは、ペーパーコード3本分にあたります。
高温多湿な日本では、特に夏場は座面が蒸れ不快な思いをされた経験をお持ちの方は多いと思います。その点、ペーパーコードは通気性があるため、蒸れることなく快適に座れます。その反面、冬場は寒いかもしれませんが、その時は、薄いクッションを敷けば解消されます。