Yチェアなどのペーパーコード 椅子 張り替え 修理 クリーニング

paper cord

ペーパーコードとは?

デンマーク製のペーパーコードを使っています

ペーパーコードデンマーク製のペーパーコードデンマークのペーパーコードを使用しています。
もともとは、農作業用などに使われていた紙ひもを、座編み用に転用したものです。樹脂(*:WAX)が含浸された紙を3本撚り合わせて出来ています。
イギリスやフランスのアンティークチェアに、ラッシュやシーグラスを編んだ椅子があります。編み方はペーパーコードとほぼ同じですが、それらは天然素材であるため、太さが一定ではなく長さも短いので、頻繁に繋ぎ合わせ、かつ、縒りながら編んでいかなくてはなりません。そのような素材は工業製品の製造には向きません。その煩雑な作業を簡略化でき、かつ、その時代のデザインに合う素材としてペーパーコードが使われるようになりました。

*:デンマーク雇用省に提出されたSAFETY DATA SHEETの組成/成分の欄の記載は、Paper/waxとなっています。


ペーパーコードを編んでいる代表的な椅子
◦ FH4133 / FH4233 Design: Kaare Klint 1936年 Fritz Hansen社
◦ J39 Design: Boge Mogensen 1947年 FDB(後、Kvist社)
◦ CH24 / Y chair Design: Hans J. Wegner 1949年 Carl Hansen & Son社 
◦ JL Moller社の椅子
などがあります。

紙を3本撚っています

ペーパーコードの構造ペーパーコードを解いてみると・・・3本のうちの1本を広げたものが左の写真です。
樹脂が含浸されているため、新しいうちは水分を弾きやすく、使っていくうちに表面に汚れが付きやすくなります。汚れた場合、デンマークでは、ソープで洗うことを案内していますが、日本の気候では、あまりお勧めできません。デンマークは日本よりも湿度がかなり低いため、すぐに乾燥しますが、日本のような湿度の高いところではなかなか乾燥せず、シミやカビの原因になってしまう場合があります。

ペーパーコードのメンテナンスは?

10年 10数年使用したペーパーコード10年以上使われたペーパーコードブラシのアッタチメントで掃除


もし汚れてしまった場合は、ペーパーコードの表面を擦らないように、汚れをタオルなどで吸い取ってください。その後、お湯をつけて絞ったタオルで、たたくようにして汚れを除去してください。

ペーパーコードの普段のお手入れは、隙間に入ったホコリを掃除機で吸るだけで十分です。

デンマークでは、木部と一緒にソープで洗うことを説明している場合があります。しかし、日本とデンマークの気候の違いを考えますと、日本ではソープで洗わないほうがいいと考えています。
日本と比べてデンマークは乾燥しています。コペンハーゲンで、夜にジーンズを洗濯し翌朝には乾いていて驚いた経験があります。高温多湿な日本では、洗った後のペーパーコードから、なかなか水分が抜けず、カビの発生や悪臭の原因にもなりかねません。絶対洗わないほうがいいとまでは言いませんが、苦労したわりには報われないというのが、個人的な感想です。乾いた後に、障子のようにピンと張ることもありません。


耐用年数は?

前縁にこのような線がくっきりでてきたら張り替えのサインペーパーコードの耐用年数は?ペーパーコードの耐用年数は?


日本の荷造り用の紙ひもは再生紙で繊維が短いため、そのままでは椅子張りには適しません。デンマーク製のペーパーコードの原材料は、スウェーデン産のパルプを使用しており、椅子張りに使われるようになってから80年近い実績があります。通常、10−15年くらいで張り替え時期となりますが、使用条件によっては、25年以上ご使用になれる場合もあります。
左側は、私が20年以上前に張った椅子。右側の写真は、15年ほど使用され、張り替えのため届いた椅子です。使い方によって大きく差がでますが、数年で、写真のように真中に少し隙間ができます。これは、ペーパーコードが伸びたためです。長年使用していると、荷重によってペーパーコードが伸びて、左写真のように線が出てきます。このままでもすわれますが、腿の裏にあたって座り心地も悪くなります。そのまま使い続けますと、座面前縁内側の角とペーパーコードが擦れて切れてきます。1−2本切れてもすぐに使えなくなることはありませんが、張り替えをしたほうがいいでしょう。

ちなみに、50年ほど経ったY チェアの座面を補修したことがありますが、いわゆる”かぜをひいた”状態になっていて、折り曲げると崩れてしまうような状態でした。