Soap finishとは?
石鹸溶液でパイン材の床を洗うことから始まった仕上げ方法です。
1900年代後半のデンマークで広く広まった、パイン材の床を仕上げる方法ですが、パイン材の床は経年変化で暗い色に変化してしまいます。そのパイン材の床が黄変するのを防ぎ、白く保つ為に石灰水を床に塗布していました。その床をメンテナンスするときに石鹸で洗っていた仕上げが、床だけでなく家具にまで広まったと言われています。現在は、石鹸溶液に石灰が混ぜられたWhite-soapというものも販売されており、洗うのと同時に洗浄することができます。
石灰はパイン材の導管に入り込み、汚れを付きにくくする効果があるとのことですが、石鹸も脂肪分が導管に入り込み、汚れから木材を守る効果があるそうです。そのため、ソープ仕上げに使う石鹸は、脂肪分の多い(80%以上)石鹸でないと効果をえられません。
石灰水で黄変を防ぐ方法は針葉樹に適した方法で、オーク材などの酸性が強い木材には適さず、アルカリ性の石灰水と化学反応を起こすため濃い緑色にり、決して元には戻らないそうです。
石鹸の始まり
石鹸の始まりは、紀元前3000年頃、メソポタミア文明の初期、シュメール文明の粘土板に薬用としての石鹸の記述があるそうですが、大量に製造されるようになったのは12世紀頃のフランスのマルセイユ。今でもマルセル石鹸の名前を残すほどの石鹸工業の中心地だったとのことです。
1800年代以降に、やはりフランスで安価な石鹸の製造が可能になり、オートメーション化の技術も確立したようですので、日常的に石鹸をつかうようになったのはその頃からでしょう。
デンマークでは、フレーク状の石鹸(ソープフレーク)を使って衣類や床、家具を洗っていますが、ソープフレークは、街中のスーパーマーケットで簡単に入手できます。
1800年中頃に、このソープフレークを製造する機械がデンマークで開発されました。そのため、フレーク状の石鹸がデンマークでは一般的なのかもしれません。日本には工業用のソープフレークがあると聞いたことがありますが、一般的には入手できないようです。
その後、1900年代になってから商品としてのソープフレークが販売されるようになったので、この頃から北欧の家庭で一般的に使われるようになったと思われます。
ちなみに、フレーク状になっている理由は溶けやすくするためです。日本の固形石鹸もカッターなどで簡単に削れますので、フレーク状にしてお湯に溶かしてください。ソープフィニッシュには少ししか石鹸を使わないので、石鹸を丸ごとお湯に浸けてしまったら、後の処理が厄介になります。もちろん、粉石鹸も使えますが、匂いのきつい香料などが入っていない方が、あとあと匂いが残らず、良いと思います。
余談ですが、日本でソープフィニッシュのYチェアが販売されるようになったのは1995年4月頃からです。それ以前は、ワックス仕上げでした。このワックスは、パラフィンや蜜蝋、カルナウバ蝋などがブレンドされたもので、溶剤によって塗りやすい粘度に調整されていました。ワックスを塗る時には、溶剤の匂いが結構気になりましたので、工場で大量に塗る場合には、かなり匂いが気になったでしょう。それが、ワックスからソープに仕上げが変わった理由です。
工場でソープを塗るときどうするかというと、石鹸溶液のシャワーの中に椅子を通したり、風呂桶のような容器に石鹸溶液を入れて、その中に浸けています。オーク材はアクが出て石鹸溶液が茶褐色になりますので、ビーチ材とオーク材は別々の容器を使います。テーブルの場合はスポンジで塗布します。
ご自身でソープフィニッシュをする場合、オーク材の椅子は後回しにしてビーチ材やアッシュ材などの色の薄い木の椅子から始めましょう。また、石鹸の泡が木材の表面に残ったまま乾燥すると、シミができることがあります。
またまた余談ですが、オイル仕上げのYチェアも1995年から日本で販売が開始されました。デンマークでも、まだオイル仕上げのYチェアは定番にはなっておらず、日本が最初です。