ペーパーコード

Danish cord

デンマーク製ペーパーコード

デンマークのペーパーコード ”デニッシュコード” を使用しています。

 
 デンマークの家具メーカー(Carl Hansen, PP Mobler,  J.L Mollerなど)が使用しているものと同じペーパーコードを使用しています。ご要望があれば、日本製のペーパーコードなども使います。日本製の少し太くて柔らかいペーパーコードの方が向いている椅子もあります。
 

ペーパーコード(デニッシュコード)の特徴

 
 ペーパーコードの座面は、通気性が良いため、高温多湿の日本の住環境にも適したものだと思います。革で張られた座面だとお尻が前方に滑ってしまうことがありますが、ペーパーコードの座面は滑りにくいため、腰への負担が少なくなります。
 
 ペーパーコードはテープ状の紙を拠って作られています。紙と聞いて耐久性に不安をもたれる方もいると思いますが、適切な技術で張ることにより、およそ10-15年以上はご使用になれます。ご使用される環境にも左右されますが、紙だからといって耐久性が劣るということはありません。革や布張りの座面と比べても、同じかそれ以上の耐久性があると言ってもよいでしょう。
 
 もともとは、農作業用などに使われていた紙ひもを、座編みのために転用したものとされています。ペーパーコードは、樹脂(*:ワックス)が含浸された紙テープを3本撚り合わせて作られています。
 イギリスやフランスのアンティークチェアに、ラッシュやシーグラスを編んだ椅子があります。編み方はペーパーコードとほぼ同じですが、それらは天然素材であるため、太さが一定ではなく長さも短いので頻繁に繋ぎ合わせ、かつ、縒りながら編んでいかなくてはなりません。そのような素材は工業製品の製造には向きません。その煩雑な作業を簡略化でき、かつ、その時代のデザインに合う素材としてペーパーコードが使われるようになりました。
 第二次世界大戦中の物資不足でシーグラスなどが入手困難になったため、代用品としてペーパーコードを使い始めたとも言われています。コーア・クリントのChurch Chair(1936年)や、ボーエ・モーエンセンのJ39(1947年)は、発売当時はシーグラスで編まれていましたが、後にペーパーコードで編まれるようになりました。
 1942年、家具部門のオフィスを開設したばかりのFDB (デンマーク家具協同組合)のためにコーア・クリントがシェーカースタイルの椅子を数脚デザインしています。デンマークデザインミュージアムに所蔵されているその椅子にペーパーコードが使われているようです。
 
*:デンマーク雇用省(Danish Ministry of Employment)に提出されたSAFETY DATA SHEETの組成/成分の欄の記載は、Paper/waxとなっています。

左から
3mm/アンレース・ナチュラル
3mm/アンレース・ブラック
3,5mm/レース・ナチュラル
3.5mm/レース・ブラック
ペーパーコードの拠りを解いたところ

ペーパーコードのメンテナンスは?

 
普段のお手入れは、隙間に入ったホコリを掃除機で吸い取ってください。

 
 掃除機ののズルの先端をブラシ付きのものに替えて、隙間の誇りを吸い取ってください。
 

食べ物をこぼしてしまったら?

 
 ペーパーコードには樹脂が含浸されているため、新しいうちは水分を弾きやすく、使っていくうちに表面に汚れが付きやすくなります。
 新しいうちは、シャワーなどで洗い流すこともできますが、長く使われている場合は、表面が毛羽立っています。あわてて擦って取り除こうとすると、シミが広がることがあります。まずは水分を吸い取り、固形物は乾燥してから取り除いたほうがいい場合もあります。
 もし汚してしまった場合は、ペーパーコードの表面を擦らないように、汚れをタオルなどで吸い取ってください。その後、お湯をつけて絞ったタオルで、たたくようにして汚れを除去してください。擦ると毛羽立ってしまいます。毛羽立つと、より汚れがつきやすくなります。
 
 デンマークでは、木部と一緒にソープで洗うことを説明している場合があります。しかし、日本とデンマークの気候の違いを考えますと、日本ではソープで洗わないほうがいいと思います。日本と比べてデンマークは、かなり乾燥しています。コペンハーゲンで、夜にジーンズを洗濯し、翌朝には乾いていて驚いた経験があります。
 高温多湿な日本では、洗った後のペーパーコードから、なかなか水分が抜けず、カビの発生や悪臭の原因にもなりかねません。絶対洗わないほうがいいとまでは言いませんが、苦労したわりには報われないというのが、個人的な感想です。乾いた後に、障子のようにピンと張ることもありません。気をつけて洗っても、毛羽立ちが目立ってしまうだけかもしれません。
 
 


特注しているL釘(ステンレス製)

古い椅子から外したさまざまなL釘(奥)・使用しているL釘(手前)

L釘

ペーパーコードを留める釘
 

 平編みの場合、ペーパーコードを折り返して編みますが、その時に使うのがL釘です。張替えにおいて、古いL釘は全て交換します。古いL釘は、折れていたり錆びているものがほとんどで、抜けて紛失しているものや、作業の時に折れてしまうこともあります。
 今までに交換した古いL釘を比較してみると、微妙に形状が違っています。
打ち込みやすい形状にこだわり、丈夫で耐久性のあるステンレス製のL釘を特別に製作してもらっています。